ロングステイへの道

No. 10 タイスタイルハウスの特徴（その5）

- 屋根の張り出し –

伝統的なタイスタイルハウスは屋根が広く張り出しており、窓や外壁を雨や太陽の照りつけより守ります。このため、窓をいつも開けておくことができ、一日中通気を確保できます。

現代の家では屋根の張り出しが小さいため、壁で直接日光を受けます。日中、太陽のエネルギーにより壁の温度が上昇し、夜間、蓄えられた熱は内部へ放射され室内の温度を上げます。さらに、日中は窓より直射日光が射し込むため不快です。

- まぶしさ -

伝統的な家が持つ幅広く張り出した屋根は青空を視界より遮り、まぶしさを防ぎます。周囲の緑や隣接する家の木の壁はまぶしさをさらに弱めます。

現代の家は青空を望むために窓が大きく開いています。視界が開け、まぶしさを遮ることができません。コンクリート舗装の道路や隣家の明るい壁からの照り返しは、まぶしさを増します。

- 明るさ -

伝統的なタイスタイルハウスは明るくありません。心理的な影響で、薄暗さは涼しさを感じさせます。ただし、薄暗さは人工的な照明で補うことができます。

窓の位置が高いこと、また室内の壁に明るい色を使うことが多いので、現代の家の内部の明るさは増します。また、人工的な照明を使い過ぎると室内がまぶしくなります。

No. 9 タイスタイルハウスの特徴（その4）

- 風の強さ –

高さが高くなるほど風は強く吹きます。伝統的なタイスタイルハウスは高床式であるため地上に建つ家よりも強い風を受けます。家が高く建てられていることは、特に、周りに木々が茂り風の通りが悪い所では重要になります。

現代の家は地上に直接建てられているために、地表面で吹く弱い風を受けます。また、プライバシーを守るために家を囲むように生垣や垣根が設けられ、これは風をさらに弱めたり、ブロックします。

- 身体の高さでの風通し –

快適さを得るためには身体の高さでの風通しが最も重要です。伝統的なタイスタイルハウスの窓や入り口の背は高くまた広く大きく開くことができるために、身体の高さでの風通しは十分です。

現代の家の窓はプライバシーを守るために壁の高い位置にあり、身体の上部の一部しか風を受けません。

- 家の向き –

タイの伝統的な家、タイスタイルハウスは東—西の方向に建てられます。これにより太陽から受ける熱が最も小さくなります。

現代の住宅開発では利益が第一に考えられます。用地の中に許される限りの多くの家が建てられて、家はジグソーパズルのようです。太陽からの受ける熱を最小にする家の向きは考慮されません。

No. 8 タイスタイルハウスの特徴（その3）

- 屋根部分の通気 –

伝統的な家の屋根には隙間があり、十分な通気を確保することによって屋根部分の温度の上昇を防ぎます。現代の住宅団地でよく建てられる家には、温度の上昇を防ぐために通気ではなく、断熱のために屋根裏に空気を閉じ込めます。この建築方法では天井が高くないと効果が期待できません。

- 植生 –

農村の家の周りではヤシの木のような背の高い木をよく見かけます。影で涼が得られるだけではなく、家の高さでの風の吹き抜けを妨げません。現代の住宅団地の敷地はあまり広くなく、またプライバシーを保つために、生垣や背の低い木がよく植えられます。このため、家の高さでの風の通りがしばしば妨げられます。

- 家の通気性 –

伝統的な家には縦長のものが多くあります。また、室内の仕切りが少ないため、空気の流れが容易で、風がよく通ります。現代の家は形状がより複雑で、内部は小さな部屋に区切られています。このため、空気が流れにくく、風の通りは悪くなります。

No. 7 タイスタイルハウスの特徴（その2）

タイの伝統的な家、“タイスタイルハウス”で夫婦円満!!　妻は大のエアコン嫌い。夫はエアコンがないと夏を過せない。真夏の夜はエアコンを“入れる”、”切る“で大騒ぎです。結果はお分かりのことと思いますが。

タイではできる限りエアコンを使わない生活を送ろうと考えています。タイスタイルハウスでは可能です。夫婦が円満になるための伝統的な家の特徴を説明します。

- 建築材料 –

伝統的な家、“タイスタイルハウス”は木材、竹、その他の自然の材料より造られています。軽量で熱容量が小さい自然材料で造られた家は、日中の照りつける太陽の熱を蓄えにくく、また熱を発散し易いため、夜は涼しく過ごせます。ガラス窓はあまり使われません。

一方、現代の家はレンガ、タイル、コンクリートなど熱容量の大きい材料が使われています。これらの材料は熱を蓄えて室内へ再放射するため、室内の温度が上がり不快度が高まります。ガラス窓を多用するのも現代の家の特徴です。

- 家の配置 –

伝統的なタイスタイルハウスの配置はランダムです。このため風通りがよく、風下の家でも風が弱まることはありません。

現代の家、例えばタウンハウスのように連続した家々は風の通り道をブロックし、風下の家には風が届きません。

No. 6 タイスタイルハウスの特徴（その1）

タイの伝統的な民家は熱帯気候のもとでいかに快適に過ごすかの知恵があふれています。高床式で木造、優雅な曲線の幅広く尖った屋根、そして広いテラスを持つ民家は、照りつける太陽、スコール、洪水などの熱帯地方の気候に最も適したものです。タイに限らず、マレイシアなど東南アジアの国々の伝統的な民家は同じような特徴を持っています。

もう一つタイの伝統的な民家の特徴は、いくつかの建物、例えば両親の寝室、子供夫婦の寝室、子供部屋、台所などが独立して建てられ、これらが一つのテラスで繋がっていることです。

タイは元々農業を基礎にした社会であり、タイの人々は何世紀にもわたり周囲の環境と共生してきました。これは人々のライフスタイルや伝統的な家のスタイルにも反映されています。木材や竹を建築材料に使っていたことは、タイではこれらの資源が過去には豊富だったことを示しています。残念ながら、今のタイでは自然や伝統は失われてきており、特に大都市のバンコクでは顕著です。

今後、このブログではタイの伝統的な特徴を備えた家をタイスタイルハウスと呼ぶことにし、これから数回にわたりタイスタイルハウスが持つ知恵を紹介します。我々の家も、伝統的な知恵と新しい便利さを組み合わせたものにしたいと考えています。

なお、バンコクでタイスタイルハウスを見ようとすればジムトンプソンの家を訪問して下さい。または、次のサイトにアクセスして下さい。

The Jim Thompson House (http://www.jimthompsonhouse.com/)

No. 5 タイスタイルハウスへの憧れ

“タイスタイル“　　タイ在住の人々、また観光でタイを訪れる人々、全ての人がそれぞれ違うタイのイメージを持ち、また、いろいろなタイスタイルに出会われているものと思います。多くのタイに関するブログを見ると千差万別で、興味が尽きません。

我々が感じているタイスタイルは、もちろんバンコク、訪問した町や村の日常の生活に関するものがほとんどです。しかしながら、建築物、インテリア、そして庭に関するタイスタイルは、題名が“THAI STYLE”の写真集に大きな影響を受けました。タイで家を建てることを考え始めたきっかけがこの本です。

“THAI STYLE”は、タイの伝統的な建物やインテリアを紹介したもので、実際に使われている住宅の事例が多く紹介されています。これから建てる家のコンセプト創造に多いに参考にしたいと考えています。