“ワット・スワン・ダラ・ラーム”の壁画は仏様や仏教に関係するものばかりではありません。ここには”マハラ・ナレスワン“、すなわちナレスワン大王にまつわる物語が描かれていました。さっそく話題291で紹介したお供えの”刀“、“ゾウ”、そして”雄鶏“に関する話題がないか探しました。特に、”雄鶏“の疑問を解く必要があります。
刀とゾウについては簡単です。1591年にビルマがタイに侵攻したときのことです。ゾウに乗ったナレスワン大王とビルマのミンチット・スラ皇太子が一騎打ちをして、大王が皇太子を打ち取りました。写真1の右側のゾウの上で長刀を振るっている人が大王です。皇太子が戦死したためにビルマ軍は撤退し、首都であるアユタヤは救われました。“刀”と“ゾウ”のお供えはナレスワン大王の武勲を讃えるためのものです。
雄鶏の物語を描いた壁画も見つかりました。写真1で描かれた戦いより20年も前のことです。1569年にアユタヤはビルマに占領され、ナレスワン大王、その当時は皇太子でしたが、ビルマへ人質として送られました。そして、ペグーで9年間人質として過ごしました。その時の出来事です。
この地域では当時から闘鶏が盛んだったとみえ、ナレスワン皇太子とビルマの皇太子が、彼らが飼っている雄鶏を闘わせました(写真2)。写真の右側がナレスワンですが、彼の鳥が勝利しました。誇らしげに、泣きべそをかいたビルマ皇太子から賭けたお金の支払いを要求しています。
タイの人々の好きな物語です。これでなぜ“雄鶏”がお供えであるかご理解できたことと思います。雄鶏は、小さいときから敵に打ち勝つことができたナレスワンの力を現したものです。
なお、手前の扇風機はお寺のもので、壁画とは関係ありません。あしからず。
- 続く -
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